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kWatanabe の 技術帖

某企業でOSや仮想化の研究をやっているインフラ系エンジニア。オンプレとクラウドのコラボレーションなど、興味ある技術を綴る。

Windowsでpovo2.0が「圏外」になる問題をATコマンドで解決する

  • LTE搭載のWindows PCでpovo2.0を使おうと思ったが「圏外」となり接続できなかった
  • ATコマンドを用いてモデムに直接設定を行ったところ、問題が解決した

GPD Win MAX2 の LTE モデルで povo 2.0 に繋ぎたい

先日、GPD Win MAX2 を購入した。当時、たまたま LTE 搭載モデルが最安だったので、povo 2.0 を契約して挿しておけば、旅行や出張が捗るのではと期待した。

しかし、povo 2.0 を契約し、SIM カードの挿入と APN 設定を行っても、ステータスは「圏外」となり LTE に接続できなかった。ググると以下のような設定方法を見つけられるが、自分にはいずれの方法も効果が無かった。

internet.watch.impress.co.jp

mikioblog.dolphinsystem.jp

また、GPD のWebページからドライバを入手し、Windows 標準ドライバから LTEモデムのメーカ(Quectel)のドライバに更新したりもしたが、これも効果が無かった。

gpd.hk

Windows11 の UI の問題?

上記で挙げたWebページをはじめ、世の中のバラバラな情報をかき集めると、以下の状況が見えてくる。

  • MVNOやサブブランドのSIMでは「規定のAPN」が悪さをすることがある
  • 5G対応のSIMでは「APNの種類」で「インターネットおよびアタッチ」を選ぶ必要がある
  • 5G非対応のモデムでは「APNの種類」で「インターネット」しか表示されない
  • 「インターネットとアタッチ」が表示される環境でも、まれに消えることがある

なんとなく、WWAN周りにおける Windowsユーザインタフェースの造りが甘いのでは?という問題が透けて見える。

AT コマンドで直接制御する

組み込み系ではよくやる方法だけども、LTEモデムやダイヤルアップモデムは、ATコマンドと呼ばれるコマンド群で制御ができる。インタフェース系の問題であれば、直接LTEモデムへコマンドを送ってしまえば設定できるのでは?と考えた。

検証環境

  • Windows11 Home 22H2
  • GPD WIN MAX2 (2022モデル)
  • Quectel EC25-J
  • RLogin 2.28.1

手順

LTEモデムに接続する

LTEモデムの多くは、UARTでATコマンドを受け付けているため、ここにシリアルコンソールで接続する。今回は Quectel USB AT Port に対して、ターミナルエミュレータの RLogin を用いて接続した。

LTEモデムに接続

接続できたら、AT コマンドで疎通を開始し、ATI コマンドでモデムの情報を取得する。

AT
OK

ATI
Quectel
EC25
Revision: EC25JFAR06A06M4G

モデムの情報が分かれば、メーカーサイトからデータシートを取得し、対応しているATコマンドを確認する。Quectel の EC25 ならば以下になる。

www.quectel.com

APNの設定を行う

まずは、現在の APN の状態を確認する。

AT
OK

AT+CGDCONT?
+CGDCONT: 1,"IPV4V6","uno.au-net.ne.jp","0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0",0,0,0,0
+CGDCONT: 2,"IPV4V6","","0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0",0,0,0,0
+CGDCONT: 3,"IPV4V6","ims","0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0",0,0,0,0
+CGDCONT: 4,"IPV4V6","SOS","0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0",0,0,0,1

OK

自分は Windows11 の GUI から povo2.0 のWebページに記載されている設定 を行っているにも関わらず、 実際に LTE モデムに読み込まれている設定は KDDI の規定 のものになっている。そこで、LTEモデム上の不揮発メモリに対して、設定を上書きしてやる。

AT+CGDCONT=1,"IPV4V6","povo.jp"
OK

AT+CGDCONT?
+CGDCONT: 1,"IPV4V6","povo.jp","0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0",0,0,0,0
+CGDCONT: 2,"IPV4V6","","0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0",0,0,0,0
+CGDCONT: 3,"IPV4V6","ims","0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0",0,0,0,0
+CGDCONT: 4,"IPV4V6","SOS","0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0.0",0,0,0,1

OK

その後、LTEモデムを再起動させて、15秒くらい待機する。

AT+QPOWD=1
OK

POWERD DOWN

LTEモデムの再起動が完了すると、「圏外」だったステータスが接続済みとなる。

LTEネットワークに接続できた様子

まとめ

  • GPD WIN MAX2 搭載の LTE モデムに povo2.0 の SIM を搭載したが、APN設定がうまくいかず「圏外」となる事象が生じた
  • LTEモデムに対して AT コマンドで制御を試みた結果、GUI から設定したAPN設定が反映されていない様子だったため、そのままATコマンドでAPN設定を上書きしたところ、問題が解消した